○● There's no border between us.
「あらー冬獅郎クン!こんにちはー」 「・・・俺もう隊長なんすけど。つーかここは俺の部屋っすから」 「やだー細かい事気にしてちゃ大きくなれないわよー?」 とある日。執務室の襖が名乗りもせずに景気良い音を立て開けられる。 ぴく、と体が素直に反応してしまう辺り自分は単純だと思う。 入ってきたのは予想通り、九番隊三席、だった。 身長の事は正直言って俺には禁句だ。 ・・・ただ、には言い返すことすらできない。何とかの弱みってやつか。 「あ、ー久し振りねー」 「良かった乱菊さんいたッ!会いたかったのーっ」 「っ・・・可愛い子ねもうっ!」 一応この部屋の主である俺を無視の方向でひし、と抱き合っている二人。 そうなれば当然の如く仕事なんて手に付かない松本はここぞとばかりに彼女と盛り上がった。 彼女・・・は、その隊の副隊長である檜佐木の一年後輩。 俺がこう言うのも変な話だが、相当の才傑だ。 「ん?冬獅郎クンもお菓子欲しいのー?いる??」 いつの間にか目線を向けていたのをお菓子への羨みだと思われたらしく、は饅頭を一つ手に迫ってきた。 「いらねぇ」 「まーたそういう可愛くない事言うんだからー」 「そもそも可愛さなんて求めてねぇ」 「もー・・・ま、そーゆうとこも可愛いんだけどね」 「・・・ったく」 正直言って、そんな冷静に話せる心境じゃない。 松本に心底憧れの念を抱く彼女は、どこまでも松本を真似していて。 そうなれば当然所作や服装も似てくるわけで。 もちろん死魄装の着方も。 松本には何も感じない胸元を強調したその着こなしに内心冷や汗をかく。 俺は、が好きだ。 ただしどんなにそう思ったところで彼女は俺の事を弟のようにしか思っていないし、さらに悪い事には。 「失礼します!九番隊檜佐木です!!」 「あらー・・・?」 俺の口元に饅頭を近付けていたは体勢そのままに顔を檜佐木の方に向けた。 「ぁ、修兵先輩ー!どもー・・・?」 「ども、じゃねぇ!ったくお前は、すいません日番谷隊長!すぐ持って帰るんで!!」 「いーやーよーぉ」 「駄々こねるんじゃねぇ!ホラとっとと戻るぞ!!」 檜佐木の怒声にしぶしぶ俺から離れる。 それでもまだ饅頭を手に取り乱菊の方へ逃げようとする彼女を檜佐木がひょい、と担ぐように抱きかかえた。 惚れた女が目の前で他のヤツに抱きかかえられるなんて。 一種の拷問か、これは・・・ 「やぁだ修兵先輩のエッチーどこ触ってるんですかー?」 「・・・・・・あ?」 「そんな怖い目で見ないでくださいよー冗談です、冗談!  あ、ホラお饅頭!修兵先輩、あーん」 「ん?・・・もぐ、サンキュ」 さっき俺にしていたように口元に饅頭を近づけ檜佐木に饅頭をやる。 檜佐木はそのまま口に饅頭をくわえ、執務室を後にした。 俺から嫌がっておきながら、やっぱり貰っときゃ・・・なんてくだらない後悔をする。 どんなに考えたって彼女が檜佐木を好きだという事実は変わらないというのに。 は、檜佐木が好きだ。 はっきりと本人から聞いたわけじゃねぇ。でも、見てりゃ分かる。 「・・・ったく、檜佐木の奴・・・」 「あら、隊長やきもちですか?」 迂闊だった。・・・コイツがいたんだった。 ムフフと笑って近づいてくる松本に未処理書類をバサリと押し付ける。 ・・・って、待てよ? 「いたーい!何するんですかたいちょー!?」 「松本、お前さっき何つった?」 「へ?だから痛いって・・・」 「その前」 あぁ、と松本が一瞬置いて口に出す。 「やきもち、ですか?」 「なっなんで・・・!」 「やっだもう、そんなの有名ですよー!知らないの、本人くらいのもんじゃないですかね?  あ、修兵も鈍いから気づいてなかったりするかもですけど」 俺は絶句してソファに腰を下ろした。 ・・・そしてその隙に松本は部屋から逃げ出した。 「・・・ちょう、日番谷隊長ー」 「!!・・・檜佐木、か」 「すんません、無断で入っちまいました」 夕刻近く、あろうことか俺は檜佐木に起こされた。 山積みの書類を手にした檜佐木を見て、否応なしに玲雫を思い出す。 ふと室内を見渡すと松本は見当たらなかった。 ・・・俺一人でこいつに応えなきゃいけないって訳か。 「いや、悪い。何だ?」 「あー・・・コレ書類です。  の奴がギリギリまで溜め込みやがったもんで・・・」 「・・・そうか」 部屋に夕焼けの光が鮮やかなほどに差し込み、檜佐木の顔が逆光で見えなくなる。 書類を受け取って眼を通すと、達筆だがクセのあるの署名が眼に留まった。 気が付くと俺の口は勝手に動いていた。 「の事、好きなんだろ?」 言ってから激しく後悔したものの口を突いた言葉は取り消せず。 「好きです、とても」 「そうか・・・」 「でも」 「あいつは、俺じゃ駄目なんすよ」 「・・・あ?」 「こっぴどくフラれちまったんで、何ヶ月か前に。  あー・・・  『修平先輩の事は確かに大好きなんですよ?   でもあたし、生意気であたしの事姉の様にしか思ってないような   銀髪のチビっこ愛しちゃってるんでー』  とか何とか。酷いっすよねー人が真面目に告ったてのに惚気ですよ?」 確かに息が止まった。と思った。 檜佐木の冗談か何かか、と疑う。でも、心のどこかで希望ももつ。 俺は檜佐木に軽く返事してから、執務室を飛び出した。 彼女の霊圧を探ると、それは彼女自身の隊舎の近くで。 らしくねぇと思いながらも瞬歩を使う。 ・・・タンッ 着いたのは、大木の根元だった。 日の沈む間際の空の色が枝に腰掛ける彼女の髪に鮮やかに映える。 彼女の名前を口に出すが、その名は彼女に届かずに風に流される。 俺はそのまま、彼女のすぐ後ろまで迫り声をかけた。 「」 「・・・あ、やだ!見つかっちゃったよー。  冬獅郎クン、お願いこのとーり!見逃して?」 「別に、言うつもりねーし」 「うふふ、そう?なら良いんだけど。あ、隣座る?」 ・・・サボリかよ。こんな所まで松本の真似してんのか。 ゆっくりと彼女の隣に腰を下ろすと、俺は口を開いた。 「檜佐木の奴、に告ったんだってな」 「ん、えぇ!?聞いたの!?てかどこまで・・・!?」 あからさまに焦った様子の彼女に、一言告げる。 「ぜんぶ」 「あ、あららー・・・ひょっとして、あー・・・バレちゃった、かな?」 髪を軽く梳いて、顔を俺と反対方向に向ける。 風がの髪をなびかせる。 その肩は、カタカタと小刻みに震えていた。 「あ、気にしないでよ?別にどうこうしたい訳じゃないんだから・・・!」 「」 「あー予想外!修兵先輩口軽いんだなー反省っ」 「、こっち向けって」 「やーよ・・・っ!」 無理やり彼女をこちらに向かせる。 目には大粒の涙。 腰掛ける枝がギシ、と音を立てる。 俺は。 「が、好きだ」 耳元でそう囁き、少しだけ顔を離す。 彼女の涙の溜まった目がしだいに、キョトンとした目に変わる。 「な、何言ってんの冬獅郎クン!いくらなんでも冗談キツいわよっ」 「からかってなんかねぇよ」 「まーた、そうやって・・・」 「嘘じゃねぇ」 「ホント、なの?本当に??」 「こんな事冗談で言うかよ」 「うん、あたしも・・・好き」 いつもからかうように喋る彼女が真っ赤な顔で一言そう呟けば。 そこには既に年の差なんて関係ない ○● あとがき この作品は以前わたしのサイトでフリー夢として配布していたものに 加筆修正を大幅に加えたものです>< 年上ヒロイン難しい・・・! 当初書いた時より冬獅郎さんの押しが強いです。初めはホントに年下少年ーって感じだったのですよ笑 それでは読んでくださった方々へ愛を込めて。 加筆修正...09/04/01